クラヴィス・プロミスの切替契約について新しい論点
※主債務者であるクラヴィス等の消滅時効の援用
前提論点・最高裁判所により過払い金返還義務についても引き受ける合意(切替事案)が認められた。
クオーク・タンポートの顧客が、平成23年9月30日に金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結するに当たり、プロミスが顧客との関係において、クラヴィスの顧客に対する債権を承継するにとどまらず、クラヴィスの顧客に対する債務(過払い金返還義務)についても全て引き受ける旨を合意したものとされた。
次の論点・プロミスが引き受けたクラヴィスの過払い金返還請求権の消滅時効の援用(主債務者の消滅時効の援用)
SMBCコンシューマーファイナンス 株式会社(旧プロミス)は、クラヴィスに対する過払い金返還請求権を切替契約によって承継したとしても、元々のクラヴィスに対する過払い金返還請求権が時効消滅しているため、主債務者であるクラヴィスの消滅時効の援用をするとの主張をする場合があります。
具体的には、切替契約よって併存的にSMBCコンシューマーファイナンス株式会社に対して過払い金返還請求権を請求できるとしても、主たる債務者であるクラヴィスが負担割合10割のため、主たる債務者であるクラヴィスへの過払い金返還請求が時効で消滅している場合には、SMBCコンシューマーファイナンスの過払い金返還をする義務は消滅してなくなったとのものです。
主債務者サンライフの消滅時効の効果をプロミスに及ぶことを認めた裁判例(東京地方裁判所・令和5年3月30日)
サンライフ株式会社からの切替事例について、実際に、東京地裁の令和5年3月30日(令和4年(ワ)第2352号)判決は、主債務者で負担割合10割のサンライフ株式会社の時効消滅の効果のすべてが民法429条に基づいてSMBCコンシューマーファイナンス株式会社(旧プロミス)に及ぶとの理由で過払い金返還請求を認めない判断をしています。
主債務者であるクラヴィスの破産手続の配当分配等による消滅時効の更新(時効中断)の効果がプロミスへ及ぶとの反論
そのため、クラヴィスについて消滅時効が成立するとすれば、SMBCコンシューマーファイナンスに対する過払い金請求が認められないことになってしまいます。
そこで、クラヴィスの破産手続と過払い金返還請求権の消滅時効の関係について、消滅時効が完成していない等の反論をすることが必要となります。
クラヴィスの破産手続について、破産管財人は過払い金返還請求権を有する者について、特に個別に債権届出を求めるものではないとして、届出なくして配当の分配を行いました。
そして、破産法には、破産手続での債権届出や裁判所による債権額の確定の際に、当該債権の消滅時効についての時効猶予や時効更新(旧民法の時効の中断)の効力を認める規定もあります。
また、破産手続において配当が行われた場合には、当該債権について破産管財人によって過払い金返還の債務を承認する効果があるとも考えられます。
そのため、破産管財人から配当の入金があった銀行口座履歴を取得して消滅時効時効の援用に対して反論するなどが効果的と考えます。
この論点については、当事務所でも裁判例がありませんので今後も争われていく論点であると考えます。
上記のように貸金業者は日々新しい主張をしてきますので、まずは、弁護士にご相談ください。